在宅医療クリニックの経営は儲かるのか?開業後の収支と利益率を検証

スポンサーリンク

先日、税理士さんを通じて、在宅医療クリニックの開業を検討している先生と話す機会がありました。

良い機会なので、在宅医療について情報を整理しました

今回は、在宅医療クリニックの経営について、まとめた情報をご紹介します。

◆在宅医療クリニックとは?

在宅医療クリニックのタイプは大きく2つに分かれます。

1つ目のパターンは在宅医療に特化したタイプ。

複数の医師と大勢のスタッフを抱え、外来患者はほぼ診ないというスタイルです。

機能強化型在支診などが該当し、診療報酬も高いですが、

  1. 24時間連絡を受ける体制の確保
  2. 24時間の往診体制
  3. 24時間の訪問看護体制
  4. 緊急時の入院体制
  5. 連携する医療機関等への情報提供
  6. 年に1回、看取り数等を報告している

など、ハードルも高くなっています。

2つ目のパターンは外来をやりながら、決まった曜日や時間だけ在宅医療を行うハイブリッドタイプ。

在宅の経験があまりない先生の場合は、こちらのスタイルがハードルが低いと思います。

通常の「在支診」や在支診の届出を行わないで在宅医療に取り組むクリニックもあります。

在医総管・施設総管は在支診でなくても算定できます

在医総管の施設基準
・在宅医療の調整担当者の1人以上の配置
・医療提供ができる体制の継続的な確保
・保健医療サービスおよび福祉サービスとの連携調整を担当する者の配置
・在宅医療を担当する常勤医師の勤務と継続的な訪問診療の体制確保
・市町村、在宅介護支援センターなどに対する情報提供
・緊急時などの協力体制の整備

◆収支と利益率

(1)収入

在宅医療の収益は大きく以下の3つから成ります。

①在医総管・施設総管

正式名称は、在宅時医学総合管理料施設入居時等医学総合管理料です。

在宅療養中の患者さんの全身状態を総合的に管理することを評価するもので、月に1回算定できます。

非常に細かい設定がありますが、在医総管の一番高いところが5,400点、一番低いところが560点です。

在医
総管
機能強化型在支診・在支病(病床あり)機能強化型在支診・在支病(病床なし)在支診・在支病その他
1人2~910人1人2~910人1人2~910人1人2~910人
①月2回以上重患5,400点4,500点2,880点5,000点4,140点2,640点4,600点3,780点2,400点3,450点2,835点1,800点
②月2回以上4,500点2,400点1,200点4,100点2,200点1,100点3,700点2,000点1,000点2,750点1,475点750
③月1回訪問2,760点1,500点780
2,520点1,380点720
2,300点1,280点680
1,760点995
560

①は重症患者に対し、月に2回以上訪問した際に算定できる点数です。

重症患者の定義は、施設基準の別表8の2に記載があるのですが…

この別表がお役所文書で見にくいので、以下にまとめました!

別表第八の二 在宅時医学総合管理料及び施設入居時等医学総合管理料に規定する別に厚生労働大臣が定める状態の患者
一 次に掲げる疾患に罹患している患者
末期の悪性腫瘍
スモン
難病の患者に対する医療等に関する法律第五条第一項に規定する指定難病
後天性免疫不全症候群
脊髄損傷
真皮を越える褥瘡
二 次に掲げる状態の患者
在宅自己連続携行式腹膜灌流を行っている状態
在宅血液透析を行っている状態
在宅酸素療法を行っている状態
在宅中心静脈栄養法を行っている状態
在宅成分栄養経管栄養法を行っている状態
在宅自己導尿を行っている状態
在宅人工呼吸を行っている状態
植込型脳・脊髄刺激装置による疼痛管理を行っている状態
肺高血圧症であって、プロスタグランジン I2製剤を投与されている状態
気管切開を行っている状態
気管カニューレを使用している状態
ドレーンチューブ又は留置カテーテルを使用している状態
人工肛門又は人工膀胱を設置している状態

施設総管は高いところが3,900点、低いところが560点です。

施設
総管
機能強化型在支診・在支病(病床あり)機能強化型在支診・在支病(病床なし)在支診・在支病その他
1人2~910人1人2~910人1人2~910人1人2~910人
①月2回以上重患3,900点3,240点2,880点3,600点2,970点2,640点3,300点2,700点2,400点2,450点2,025点1,800点
②月2回以上3,200点1,700点1,200点2,900点1,550点1,100点2,600点1,400点1,000点1,950点1,025点750
③月1回訪問1,980点1,080点780
1,800点990
720
1,640点920
680
1,280点725
560

重症患者の定義は、在医総管と同じですね。

②在宅患者訪問診療料

在宅療養を行っている患者で、通院による療養が困難な者に対して定期的に訪問して診療を行った場合に算定します。

月に2回行くケースが多いですが、2回とも算定できます

在宅患者訪問診療料1
イ 同一建物居住者以外の場合 888点
ロ 同一建物居住者の場合 213点

在宅患者訪問診療料2
イ 同一建物居住者以外の場合 884点
ロ 同一建物居住者の場合 187点

③居宅療養管理指導料(介護保険)

利用者の自宅に訪問し、療養上の指導や健康管理、アドバイス等を行った際に算定できます。

こちらも月に2回行けば、2回算定できます

居宅療養管理指導費Ⅱ ※在医総管、施設総管を算定する場合
単一建物居住者が1人の場合 295単位
単一建物居住者が2~9人の場合 285単位
単一建物居住者が10人以上の場合 261単位

上記を中心とした点数により、自宅患者は月間平均7万円、施設患者は3万円くらいの収益が上がります。

在宅患者を抱える目安は、自宅患者のみで50人、施設患者のみで150人と言われています。

例として、自宅患者を20人、施設患者を70人と考えると、医業収益は

20人 ✕ 70,000円 = 1,400,000円
70人 ✕ 30,000円 = 2,100,000円
  (合計)      3,500,000円

となります。

(2)支出

次にコストですが、上記の患者数でしたら、医師1名、看護師1名、事務1名で良いでしょう。

医師   1,500,000円
看護師  300,000円
事務   250,000円
(合計) 2,050,000円

上記に加え、クリニックの賃料や医療機器のリース、医薬品、消耗品がかかります。

賃料   150,000円
リース  100,000円
医薬品  150,000円
消耗品  150,000円
その他  450,000円
(合計) 1,000,000円

(3)利益率

収入から支出を引いて残った利益は、45万円となります。

利益率は12.9%ですね!

◆経営は儲かるのか?

通常の個人診療所(内科)の利益率平均は30%と言われていますので、上記の12.9%は低く感じます。

しかし、個人診療所の30%には、院長個人の取り分(生活費)が含まれていません。

上記の在宅医療クリニックでも、医師給与を除けば、利益率は55.7%となります。

一般に、在宅医療クリニックは、賃料や医療機器などの固定費が安価となるので、利益率は良いと考えられます。

◆営業の方法は?

在宅医療の場合、患者はケアマネと病院から紹介を受けることが多いです。

ケアマネは居宅介護支援事業所にいます。

病院は地域連携部門です。

まずは挨拶に行くところから始まりますが、その際、パンフレットなどの紙媒体を準備しておくと、効果的でしょう。

手作りでいいので、

  • 在宅診療開始までの流れ
  • 費用の概算
  • 24時間サポート体制
  • 入院する際の連携病院

などを分かりやすく記載すると、ケアマネなどが患者さんに説明しやすくなります。

◆まとめ

という訳で今回は、在宅医療クリニックの経営について、まとめて参りました。

実際に開業される際は、細かい事業計画が必要となります

医療に強い税理士さんや、素性のしっかりした医療コンサルなどに相談するのが良いと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました