2020年4月に行われる診療報酬改定。
新型コロナウイルスの影響で、報酬改定セミナーが中止になってしまいましたね
そんな穴を埋めるべく、この記事では、改定されるポイントを10項目にまとめてご紹介していきます。
①2020年度診療報酬改定の改定率
まず、2020年度診療報酬改定の改定率は、
- 診療報酬本体+0.55%(医科+0.53%、歯科+0.59%、調剤+0.16%)
- 薬価等△1.01%(薬価△0.99%、材料価格△0.02%)
です。
従来であれば「ネットで△0.46%のマイナス改定」と言うところですが、今回改定には消費税財源も含まれるため、
「ネット」の数字については表示しない
と、されています。
本体部分の引き上げ分+0.55%のうち+0.08%は、救急病院における勤務医の働き方改革へ充当されます。
②救急医療~働き方改革と体制充実
今回の改定、救急医療に対しては充実が目立っています。
具体的には、
- 地域医療体制確保加算の新設
- 救急搬送看護体制加算の拡充
- 救急医療管理加算の拡充
が上げられます。
1.救急医療体制確保加算は、なんと520点。
- 救急車、救急医療用ヘリコプターによる搬送件数が年間2000件以上あること
- 病院勤務医の負担軽減、処遇改善に資する体制を整備していること
が条件となっており、働き方改革にも配慮されています。
2.救急搬送看護体制加算は従来もありましたが、上位ランク(400点)が追加。
こちらの要件は、
- 救急車、救急医療用ヘリコプターによる搬送件数が年間1000件以上あること
- 救急患者の受け入れへの対応にかかる専任の看護師が複数配置されていること
となっています。
3.救急医療管理加算についても、加算1・2ともに50点ずつ引き上げられました。
一方で、患者の重症度等の情報を収集するための要件が厳格化されています。
③急性期入院~真の急性期に絞り込み
2020年度改定で注目されたのが、「7対1」の取り扱い。
前回(2018年)改定では、「7対1」を真の急性期病院へ絞り込むために、「入院料2・3(10対1)」への移行がしやすい点数体系としました。
しかし実際には、「7対1」から「入院料2・3」へ移行した病棟は全体の1割に満たなかったため、今回改定でメスが入ります。
具体的には、
- 重症度、医療・看護必要度の基準値の引き上げ
- A・B・C項目の見直し
が行われました。
1.については、急性期一般入院料の看護必要度が、以下のように変わります。
2018年改定 | 2020年改定 | |||
看護必要度Ⅰ | 看護必要度Ⅱ | 看護必要度Ⅰ | 看護必要度Ⅱ | |
入院料1 | 30% | 25% | 31% | 29% |
入院料2 | – | 24% | 28% | 26% |
入院料3 | – | 23% | 25% | 23% |
入院料4 | 27% | 22% | 22% | 20% |
入院料5 | 21% | 17% | 20% | 18% |
入院料6 | 15% | 12% | 18% | 15% |
2.については、認知症やせん妄患者を評価する基準2が廃止されています。
基準2
B項目の「診療・療養上の指示が通じる」または「危険行動」に該当し、A項目1点以上かつB項目3点以上
基準2は前回できたばかりなのに…
④軽度急性期入院~地域包括ケア病棟はブレーキ
2014年の診療報酬改定で新設されて以来、順調に増加してきた地域包括ケア病棟。
その役割は、
① 急性期後の患者の受け入れ(ポストアキュート)
② 在宅で療養する患者の受け入れ(サブアキュート)
③ 在宅復帰支援
の3つとされています。
しかし、厚生労働省の調査によると、地ケア病棟の入棟元は「自院」が最も多く(46.5%)、「自院内転棟が100%」という病院も数多くある事が分かっています。
この実態は、厚労省保険局医療課長も
地域包括ケア病棟に求められる機能の一部分しか担っていない…
と嘆いており、今回、大ナタが振るわれました。
具体的には、
- 大病院(400床以上)の地域包括ケア病棟は新規届け出不可
- 自院内転棟割合が60%以上の大病院は入院料を10%減額
- 自院内DPC/PDPS病棟⇒地包ケアへの転棟は診断群分類点数を算定(入院期間Ⅱの間)
が、変更の大きな柱です。
一方、200床未満の病院が対象の地域包括ケア病棟入院料1・3も、実績要件が厳しくなっています。
《自宅等からの受け入れに関する要件》
改定前 | 改定後 | |
自宅等から入棟した患者割合 | 10%以上 | 15%以上 |
自宅等からの緊急患者の受入 | 3月で3人以上 | 3月で6人以上 |
《在宅医療等の実績に関する要件(2つ以上満たす)》
改定前 | 改定後 | |
在宅患者訪問診療料の算定回数 | 3月で20回以上 | 3月で30回以上 |
病院による訪問看護等の回数 | 3月で100回以上 | 3月で60回以上 |
病院併設訪看STによる訪看回数 | 3月で500回以上 | 3月で300回以上 |
在宅患者訪問リハ指導管理料の算定回数 | (新設) | 3月で30回以上 |
併設の施設等による介護サービス | 提供している | 提供している |
退院時共同指導料2の算定回数 | (新設) | 3月で6回以上 |
⑤回復期入院~リハ実績指数の厳格化
回復期では、入院中のリハビリのアウトカムがより重視される方向性です。
具体的には、回復期リハビリテーション病棟入院料1・3において、実績指数の基準値が見直されました。
改定前 | 改定後 | |
入院料1 | 37以上 | 40以上 |
入院料3 | 30以上 | 35以上 |
また、データ提出については「200床以上」のバーが外れ、「200床未満」でもデータ提出が必須となりました。
中小病院にとって、診療録管理体制加算を届け出て、DPCデータを作成することは大きな負担となることでしょう。
このほか、管理栄養士の役割の強化が促されています。
- 入院料1…管理栄養士1人以上の常勤配置が義務化
- 入院料2~6…管理栄養士1人以上の常勤配置が努力義務へ
⑥慢性期入院~療養病棟に3つの試練
療養病棟では、入院料2における医療区分2・3の患者割合「50%以上」の引き上げが取り沙汰されましたが、据え置きとなりました。
その代わりに療養病棟で導入される見直しは、
- 療養病棟入院基本料の経過措置の見直し
- 中心静脈カテーテル留置に関する要件見直し
- データ提出
の3点。
1.の療養病棟入院基本料については、まず経過措置2(看護配置25対1を満たせない)が2020年3月で廃止。
経過措置1(看護配置20対1以上、医療区分2・3が50%以上を満たせない)は次回改定まで存続されますが、減算幅を10%⇒15%に拡大しました。
2.の中心静脈カテーテルについては、
- 胃瘻の代替手段として安易に採用されている可能性がある
- 入院期間が長い(過半数が180日間超)
- 感染リスクが高い
などの問題が指摘されているため、これらの問題を回避するための要件が追加されています。
3.のデータ提出については、回復期と同く、「200床未満」でもデータ提出が必須となりました。
療養病棟は入院期間が長いため、算定時期が「退院時1回」⇒「90日に1回」に改められます。
⑦外来~かかりつけ医機能の充実
外来は「かかりつけ医」の機能を充実させる方向性で、具体的には、
- 再診料の加算
- 外来機能の分化
が盛り込まれています。
1.再診料の加算については、地域包括診療加算が要件緩和され、時間外対応加算3の届け出でも算定可能となりました。
また、機能強化加算については、「健康相談の応需」や「休日の問い合わせ対応」などを患者に周知するため、院内掲示だけでなくリーフレット作成が求められています。
2.外来機能の分化については、紹介された患者の診療内容を紹介元に伝えた場合に算定できる「診療情報提供料Ⅲ(150点)」が新設されました。
「妊婦税だ!」と批判されて凍結に追い込まれた妊婦加算の代替措置としても機能することになります。
また、紹介状なしの患者が、大病院を受診することを抑制させるための負担金である「選定療養費」の対象範囲も、
(改定前)特定機能病院または400床以上の地域医療支援病院
(改定後)特定機能病院または200床以上の地域医療支援病院
と、拡大しています。
こうした外来の機能分化は、医師の働き方改革にもつながります。
⑧在宅医療~2点の条件緩和
在宅医療では、「月2回以上訪問」に対する絞り込みが予想されましたが、今回改定では見送られました。
逆に、在宅を後押しするために小幅ですが2点の条件緩和が行われています。
1点目が、在宅支援病院の往診体制の明確化。
在支病では、当直医と別に往診担当医の確保が求められますが、往診担当医の待機場所が不明確で、病院待機を強いられるケースもありました。
今回改定では、緊急時の連絡体制等を確保していれば、自宅待機でも可能であることが明確化されています。
2点目は、在宅患者訪問診療料の取り扱いの変更。
複数の医療機関が同診療料を算定する際、原則として6か月が限度とされていましたが、一定の条件をもとに6ケ月超も可能とされました。
⑨訪問看護~リハ中心のステーションを規制
地域包括ケアシステムの中で、訪看ステーションは「要」になると期待されています。
このため、昨今の診療報酬改定では、訪看ステーションの量と質を充実させる対応が行われてきました。
こうした施策の陰で、理学療法士等の割合が「80%以上」と高い訪問看護ステーションが登場。
こうしたステーションは、約7割が24時間対応を行っておらず、
健全なステーションの在り方なのか?
という意見が各方面から出ていました。
これを受けて今回改定では、機能強化型訪問看護管理療養費1・2・3の人員配置基準に、
看護師等の6割以上を看護職員とする
という条件が盛り込まれました。
訪問看護基本療養費についても、リハ職員の減算が行われています。
一方、働き方改革への対応として、機能強化型訪看ステーションの人員基準の一部が緩和。
機能強化型訪問看護管理療養費1・2については、1人の非常勤看護職員において実労働時間を常勤換算して良いこととされました。
⑩オンライン診療~風穴を拡大
前回改定の目玉であったオンライン診療。
対面診療を大前提とする医療体制に風穴を開けたのは収穫ですが、オンライン診療料の算定回数は月に65回(2018年5月)と低迷しています。
算定が少ないのは、
- 初診から6ヶ月は同一医師が毎月対面診療を実施
- 緊急時におおむね30分以内に対面診察可能な体制を有する
など、要件が厳しいことが理由と考えられています。
そこで今回改定では、オンライン診療の要件緩和が推進されました。
具体的には、
- オンライン診療料の要件緩和
- オンライン在宅管理料の要件緩和
- 遠隔連携診療料の新設
が行われます。
1.オンライン診療料については、事前の対面診療が必要とされる期間を「6か月」⇒「3ヶ月」へ短縮。
また、算定対象に(1)慢性頭痛患者(2)在宅自己注射指導管理料を算定する糖尿病、慢性肝疾患、慢性ウイルス肝炎患者が追加されます。
2.オンライン在宅管理料については、
(改定前)在宅時医学総合管理料の「月1回」の点数を算定する患者が対象
(改定後)在宅時医学総合管理料の「月2回以上」の点数を算定する患者も対象に追加
と、緩和されました。
3.遠隔連携診療料の算定対象は、てんかんと指定難病の疑いがある患者。
かかりつけ医が、拠点病院と情報通信機器を用いて連携しながら診療を行う行為を評価するものです。
◆番外編~医師多数区域では実質的な開業制限
診療所の新規開設は増加傾向にあります。
しかし都道府県格差があるほか、同じ都道府県内でも、特別区、政令指定都市など、都市部に集中しています。
そこで改正医療法では、地域の外来機能の偏在や不足などの情報を可視化し、対応していくことになりました。
具体的には、二次医療圏ごとに外来医師の偏在指標を導入し、上位33.3%を「外来医師多数区域」と規定。
2020年4月から「外来医師多数区域」で新規開業する場合、在宅医療や初期救急医療など地域に必要な医療機能を担う事を求める方針です。
厚労省の地域医療計画課は、
外来医師多数区域ではなく、それ以外での区域での開業を促す。多数区域で開業するのであれば、在宅医療などをやってもらいたいということ。開業制限ではない
と説明しています。
一方で、外来医師の偏在について
経済的なインセンティブを絡めた議論が必要
という意見もありましたが、今回の診療報酬改定では盛り込まれていません。
◆まとめ
という訳で今回は、2020年診療報酬改定で変更となる点を10項目(11項目?)、ご紹介してきました。
特にお忙しい方向けにギュッとまとめましたので、ご参考となりましたら幸いです。
◇編集後記
看護師さん―― もう少し自分に合った病院が、より適正な待遇であるんじゃないかと思いませんか?
事務長さん―― 病床区分や稼働率を上げるため、看護師さんの確保に奔走されていると思います。
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